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耕谷アグリサービス 生産・企画担当 佐々木和也さん

会社に続く道が水と瓦礫で埋め尽くされていました

入社4年目です。高校、大学と農業系の学校に通いました。仕事にするなら自然を相手にする仕事をしたいなと思って。卒業後、少し他のところで働いていたのですが、やはり農業をやりたくて農業法人を探していました。父は普通のサラリーマンで、農業とは全く関係ないんですけどね。

地震のときは事務所にいました。収穫した苺の配達に行こう、と思っていたら地震が来て。 一旦自宅の方に戻りました。3,40分経っていたのかな、その後に津波が来たので、その場にはいなかったんです。翌日会社が心配で来たら、大変なことになっていて。会社に続く道が下り坂になっているんですけど、もう降りられなくて。田んぼや道路が水と瓦礫で埋め尽くされていました。家は荒浜と同じ若林区ですが、内陸に近いほうなので全く被災はありませんでした。ただ車で10分も行けば大変な状態で、驚きました。同じ仙台市若林区の中でも、全く状況は違うんです。

夏の時期は、ひたすら草取り。もういやだと思うけど、目に見えて大きくなっていくので、ああ成長しているな、と

綿は、やはり手間がかかります。少しでも早く育つよう、ハウス育苗をしました。4月の頭に種をまき、ビニールハウスで加温しながら育てました。最低気温が12度ないと育たないという話だったので。綿の苗は畑に植えてから、10cmくらいの草丈で、1ヶ月くらいじーっとしてるんですよ。その間に雑草がいっぱい生えてくるので、それをとらないと草に負けちゃうんです。1年め、木が大きくなるのに対して植えた間隔が狭かったので、そこは改善しました。また、肥料のバランスもあります。チッ素分が多いと、体ばっかり大きくなる。津波を被ったということで、土にミネラル分などがたくさん入って、肥料が多かったようなんですね。だから今年、綿は大きくなりすぎてしまい、肥料を撒かなくても良かったかも。

植物によって、種をまく時期も違うし、肥料をほしがるタイミングも違うし、水分も好みが違う。綿なんかは水分は少ないほうがいい。植物によって好む土が違うので、この場所は去年肥料がいっぱい入っているからこれを植えようという場合もある。去年綿を植えたところは、耐塩性の強いアスパラとキャベツを植えています。

夏の時期は、ひたすら手で草取りです。毎日毎日鎌を持って草を取って、もういやだ、とか思うけど、目に見えて綿が大きくなっていくので、ああ成長しているんだな、と思ってうれしくなります。育て方としては難しくないんですが、気候が合わないこと、農薬が使えないこと、あと風で倒れやすいことなどで手間がかかります。土を寄せたり棒を立てたりしないと倒れてしまうんですよ。夏、30度超えるとばーっと伸びてきます。今年は8、9月の気温が高かったから、蒴果するのも昨年より2週間くらい早かったですね。

農業は、生きる力になる仕事。この仕事をしていることを、誇りに思います。

正直、食べない物を作ると思っていなかった。綿は花でもない、野菜でもない。なんだこれは、と思いました。でも実際僕らが作った綿が入ったものが商品になったものを見て、履いてみて、これなんだな、と。作っていて楽しいのは、花が咲いたとき、あと実が開いたときの喜び、それにつきますね。あと、こうやって収穫祭のときなどにみんな集まってくれるじゃないですか、それで喜んでくれるからやりがいがあります。個人で農家をやっていて、作ってくださいと言われたらできないかもしれない。だから貴重な経験です。

僕が農業に対して考えるのは、生きる上で一番大事な仕事、ということ。仮にお医者さんがいなくても、健康であれば生きていけるじゃないですか。でも米とか、食べ物は作らないと、生きていけない。ちゃんと栄養がある物を食べないと、病気になっちゃう。やっぱり、生きる力になる仕事だというのは、一番感じるし、その仕事をしていることを、誇りに思います。

綿はこれからも担当していくと思います。もっと綿を広めていくために、収穫して製品にするほかに、たとえば苗そのものを販売したらどうだろう、などと思っています。鉢植えにして、育てて、花を咲かせてコットンが実るまでを見たら、楽しいんじゃないかなと。そのほうが、このプロジェクトのことを忘れないんじゃないかな、と思うんです。

(2012年10月20日)